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・地獄ラーメン

『ラーメン珍長』。
 ミザリーこと神保千穂は、いつも老人ホームから電話で出前を頼むだけだったので、店に来たのは、これが初めてだった。不潔で汚い。酸化した豚の脂の匂いがひどい。吐き気がしてきた。頭のおかしい異常者が住むにはちょうど良い場所だ。
 もし、一度でも店の中を覗いていたならば、けっしてこんな店などに出前を頼むことはなかったことだろう。店内の様子から店長の異常性に気がついて、近寄るのはやめていたかもしれない。
 ミザリーは、もし生きて帰れたならば、二度とこの店に出前を注文するのはやめよう、と心に誓った。もしも、生きて帰ることがあればだが……。
 ああ、私の命はここで終わってしまうのか……。ミザリーは悲しくなって考えた。気のふれたラーメン屋はさっきからなにやら鍋を煮立てていた。好奇心に駆られてミザリーが覗き込むと、ラーメンを作っていた。よく出前で取っていた、『ラーメン珍長』のまずいラーメンだった。今日は醤油味のようだ。
 珍保長太郎はできた熱々のラーメンをドンブリに入れた。
「熱すぎる地獄ラーメン!」
 男は煮立ったラーメンを、ミザリーの頭の上にとつぜんかけた。
「熱いッ! 熱いッ! ギャーーーーーーーーーッ! 熱いッ!」
 ミザリーは絶叫して暴れた。そのひょうしに猿轡がはずれた。顔面が大やけどして焼けただれた。やけどの単位でいうと『3度熱傷』というところである。
「さあ、自分がウンコキラーだと認めるんだッ! 血も涙もない気の狂った殺人鬼めッ! すべての罪を自白しろッ!」
 珍保長太郎はポケットからICレコーダーを出して、ミザリーに見せた。「おそらく、あなたは心の治療が必要な反社会的な人格障害者なんだろう……。俺は同情しているぞ。悪いのは病気……本人ではない」
 強面だが心は優しい良い人、と自分のことをイメージして、自己陶酔する珍保長太郎。うっとりとした顔をしている。口の端からは、よだれが垂れていた。
「キチガイッ! 完全なキチガイにキチガイ呼ばわりされるなんてッ! キチガイはお前の方だッ!」
「なにッ!?」
 本当のことを言われて、珍保長太郎の脳みそのリミッターが壊れた。このクソババアッ! 命だけは助けてやろうと思っていたが、これで決まった。完全に殺すッ! 100%殺すッ!「地獄ラーメンを食えっ! 食って地獄に行けッ!」
 珍保長太郎は中身が少し残っているラーメンドンブリを、ミザリーの顔面に叩きつけた。何度も……、何度も……。分厚くてじょうぶなドンブリなので、人の顔面くらいでは、なかなか割れなかった。
 ゴズッ! ゴズッ! ゴズッ! ゴズッ! ゴズッ! ゴズッ! ゴズッ! ゴズッ! ゴズッ! ゴズッ! ゴズッ! ゴズッ! ゴズッ!
 村の鍛冶屋のように叩きつけ続ける珍保長太郎。哀れなミザリーは折れた歯を口から吐き出したあとは、動かなくなった。もう悲鳴も出ない。ぴくぴくとイモムシのように痙攣している。
 バキッ!
 珍保長太郎が気合いのこもった一撃を入れると、ついにじょうぶなドンブリにヒビが入って割れた。やった! がんばったかいがあった。珍保長太郎は達成感を胸に、割れた破片を持って、その鋭角な角をミザリーの顔面を叩きつける作業を、もくもくと続けた。
 ドピューッ!
 珍保長太郎の白いスラックスの中で、勃起したチンポコの先から、中学生のような大量の精液が吹き出した。気がつくと、ミザリーはとっくに息をしていなかった。ミンチのようになった顔面を見下ろして、珍保長太郎は原始人のように雄叫びをあげた。
「正義は、なされたりッ!」
 あまりにも声が大きいので、店のドアのちゃちな作りのガラスが震えて割れた。

・玉川上水でお前も死ね

「店長、どうして店の床に歯がぽろぽろと落ちているんですか」
 翌朝、手下のバカこと新実大介が、店内の掃除中に余計なことを言い出した。
「うるせえ」
 すげない店長。
「さらに、床には、なにかの肉の断片が転がっており、血のしみをおおざっぱに拭いたあとが見られるんですが、これ、違法性はないですよね?」
 疑り深い目で店長を見るバカ。
「殺すぞ」
 目つきが厳しくなっていく珍保長太郎。だが、新見はバカと呼ばれるだけあって、店長の危険な様子には気づいてもいない。ちょっと考えたふりをしてから、店長に言った。
「店長、やっぱり通報していいですかね?」
 ガシッ!
 やにわに珍保長太郎はバカの長めの髪の毛をわしづかみにした。それから、一度、後ろに引いて反動といきおいをつけてから、全力で顔面をカウンターの角に叩きつけた。
 ガッ!
「ギャッ!」
 悲鳴をあげるバカ。まるで痛がっているように見える。それでも珍保長太郎は、バカの髪の毛をはなさず、何度も何度も根気よく、顔面をカウンターの角に叩きつけ続けた。人生、努力が肝心だ。今回は口のあたりを重点的に狙ってみた。
「ごふっ!」
 ボロボロボロッ!
 バカは口の中から血の塊と1ダースばかりの折れた歯を吐き出した。それから、砂場で砂浴びをする犬のように、酸化した脂でべたべたするラーメン屋の不潔な床の上を、楽しそうに転がり回った。
「これで少しは静かになるだろう……」
 珍保長太郎はまんぞくそうに呟いた。「それにしても……」

 昨夜『正義は、なされたりッ!』と絶叫したときは、これですべてが解決したように思えたものだ。ところが、しばらくたってから冷静になって考えてみると、なんということだろう……。あたりまえだが、なんの解決にもなっていないではないか。よくあることである。
 ICレコーダーに自分とミザリーの会話を録音はしていたが、これはむしろ、単に自分が気の狂った人殺しであることの証拠にしかなっていない。
 これはいかん。珍保長太郎は不満足さに歯ぎしりした。手にしたICレコーダーを見つめていると、すっかりゆううつな気分になってきた。もしかして、鬱病になったのかもしれない。
 もうひとつ重要なことだが、どうもウンコキラーの正体は、ミザリーではなかったような気がしてきた。ミザリーは言わば誤認逮捕というやつである。冤罪で死刑になる運の悪い人間はこの世には、ツグダニにして食えるほどいる。だから、間違って個人的に死刑執行をしたからといって、誰にも責めることはできないだろう。その点には自信がある。
 正義や倫理というものほど、ゆらぐものはない。時代の流れとともに、白が黒になったり、黒が白になったりする例はいくらでもある。そんなに意味はない。気にしなくて良い。
 それより、重要なのは真犯人をあげることだ。大切なのは真実、それのみだ。それができないならば、自分がこのままウンコキラーの犯人とされて、電気椅子で処刑されてしまうことだろう。おそらく、この調子では、その日はそう遠くはない……。
 とりあえず、ミザリーの死体は早朝のひとけのない時間帯を見計らって、京王線のホームの下を流れる玉川上水に捨てた。
 太宰治がより高度なアクメを得ようと、彼女にチンポコを入れたまま、お互いの身体を縛って身投げしたことで有名な玉川上水だが、この近辺では大部分が暗渠となって緑道の地面の下を流れている。ところが代田橋のここでは、どういうわけか、10mほどの区間が地上に出ていた。
 ここに死体を放り込むと、暗渠の中に流れて入って行き、見えなくなる。なかなか便利な場所じゃないか。血に飢えた亀や巨大化した鯉が、どういうわけか、うじゃうじゃいる。暗渠の中で、こいつらがすべてを食い尽くすことであろう。珍保長太郎は何度か死体の処理に、ここを利用していた。鯉の丸々とした太り具合を見ると、他にも利用しているものがいるのかもしれない。

「ポンポンが痛い」
 歯のなくなったバカを見ながら、珍保長太郎は陰気そうに呟いた。少しも幸せそうには見えない。珍保長太郎はこう見えても神経が細いのである。けっこうな長期間になってしまった逃亡生活。その緊張とストレスから珍保長太郎はまったくウンコが出なくなってしまった。たいへんな便秘である。
「ええい、腹が張る」
 トイレには何度も入るのだが、ウンコは出ない。出したくでも出てこない。おそらく事件が解決するまでは、出ないであろう。腹の中で数週間分のウンコががちがちに固まってコンクリートのようになっている。考えただけでも臭くて恐ろしい。身体も心も調子が悪い。これが逃亡者の苦しみというやつなのだろうか。
「どうにかしないと電気椅子以前に便秘で死ぬ……」
 珍保長太郎は虚空を見つめながら、追い詰められた獣のように呟いた。


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